ほら いしころがおっこちたよ ね、わすれようよ

田島 征三作

 時は春、時刻は朝、窓の外は雲ひとつない青空、と来れば、誰しも元気よく寝床から飛び出して活動したくなります。 いつもはぐずぐずのんびりが好きな人でもね。そう、この絵本のおじいさんもそうだったんです。「きょうのわしは、 いつものわしとは違うのじゃ」ってね。
 おじいさんはまず、はりきって卵を集めに鳥小屋へ。しっかり卵を見ながら歩いたのは良かったんだけど、 つい足元がお留守になったのか、つまずいて転んで卵はぐしゃぐしゃ。あーあ。
 おまけに、鳥小屋の戸を閉め忘れていたものだから、逃げ出したニワトリたちが、 おばあさんが大事に育てていた花や野菜をめちゃめちゃにしてしまいました。 「おのれ〜」おじいさんはニワトリを捕獲しようと庭中を走り回り…。
 まあ、そんなこんなで平和なはずのおじいさんとおばあさんの朝が台無しになってしまったのでした。 でも、ここで「ほら、いしころがおっこちたよ」のおまじないが二人を救います。
 30年以上前からあるこの本を、若いころの私は、どこか冷めた目で、他人事として、読んでいたような気がします。 「私(や私の夫)はこんな失敗しないわ」と思っていたのでしょう。ところが、今、この絵本の中で起きているような、 可笑しいような悲しいような情けない失敗が日常茶飯事になってしまいました。だから、「ほら、いしころがおっこちたよ」 のおまじないがとてもありがたいのです。
 田島征三氏の作品は絵本だけではありません。去年の夏は新潟県の妻有で「村を絵本に」の企てを成功させ、今年は、 瀬戸内国際芸術祭の会場に「青空の水族館」を製作、展示しておられます。その場所は、高松市大島のハンセン病療養所跡地です。 田島氏は、日々前進し続ける芸術家です。また近くでお会いしたいです。

(杉原 由美子 13/4/17)

ほら いしころがおっこちたよ ね、わすれようよ

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