ふしぎなともだち

田島征彦作

 島の小学校に転校してきたゆうすけは、教室にふしぎな同級生がいることにびっくりしました。その同級生、やっくんは、自閉症と診断されている子どもです。 教室でじっと座っていることができません。先生とも、友だちとも、ちゃんと会話することができません。勝手に教室を出て、いつまでもブランコをこいでいたり、 注意されると大声で叫び出して、学校の外に飛び出して行ったりします。担任の先生もやっくんのお母さんも、やっくんを追いかけてへとへとになっていました。 まして、転校生のゆうすけは、どうやってコミュニケーションをとったらいいかわからず、お手上げ状態なのでした。 
 それでも、クラスメートたちは、ちゃんとやっくんを仲間として包み込んで、ちょっとやそっとのことでは驚いたり怒ったりしません。校長先生も、 やっくんを特別の教室に入れたりしないばかりか、大人になってからも、同じ町で働けるように、仕事も考えてくれているのです。
 自分で自分のことを説明できないやっくんは、小さな子にはからかわれるし、上級生にはいじめられます。その現場に居合わせたゆうすけは、夢中で、 やっくんをかばうのでした。そして、二人が大人になったとき、仕事でつらい目にあったゆうすけを、こんどはやっくんが慰めてくれたのです。
 絵本作家の田島征彦さんは、淡路島に引っ越して来て、この話のモデルとなった学校の校長先生と出会いました。そして、先生の思いを実現させている学校と、 地域の人たちの存在に感銘を受けました。けれども、「絵本にしよう」と決心はしたものの、気持ちばかりが先行して、なかなか作品にできなかったといいます。
 私は、以前この欄でご紹介した『さっちゃんのまほうの手』の創作過程でも、同じように作家さんの迷いや悩みがあったことを思い出しました。そんなとき、 作家さんは、一生懸命勉強をされます。やっくんのような子どもを育てたお母さんや先生の話を聞き、やっくんのような人たちの働いている場所に足を運ぶのです。 そうすると、奇跡のような出会いに恵まれ、作品の形ができるのです。田島さんの場合、作中にゆうすけとして登場している青年との出会いが、 スランプ脱出の転機となりました。
 考えてみれば、この世間、だれもが、励まし、励まされて生きているのですね。型染めという方法で作った、温かい気持ちになれる絵本です。

(杉原 由美子 15/5/21 )

ふしぎなともだち

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