動物たちのおしゃべり

山崎陽子 文 ミルコ・ハナアク 絵

 以前、うちに犬がいました。クロコという名のミニチュアダックスフントでした。私が飼っていたわけではなく、ごはんをあげるのは義母、 散歩に連れていくのは義父、義父母が不在の場合は、三人娘のだれかかれかが面倒をみていました。
 クロコがうちにきた訳は、留守勝ちの飼い主がいないとき、さびしがって吠えるので近所迷惑なので、頼まれて、義父母が預かっていたのでした。 日中家にいない私には何の責任もないので、気楽なものでした。
 しかしながら、ある朝、不覚にも粗相してしまったクロコは、普段あまり入って来ない台所にトコトコやってきて、困った顔で私を見上げるのでした。 それだけで事情を察知する私も一応は人の親なのでしょうか。後始末してやると、しばらく周りをウロウロして、黙って(当たり前ですが)去っていきました。 動物って不思議なものです。しゃべらないのに、ちゃんと何かしゃべっていると思いませんか?
 この本の言葉担当の山崎陽子さんにも、動物の言葉が聞こえました。ハナアクさんの絵に言葉をつけてほしいと依頼があったとき、 最初は無理だと断わったそうです。「どうかひと晩ながめてみて」と言われて持ち帰り、眺めているうちに、動物たちの言葉がどんどん聞こえてきたといいます。 そして、「ふんふん、なるほど」と、聞き取った言葉をさらさらと文字にして、私たちに伝えてくださいました。
 絵を描いたハナアクさんは、チェコの画家さんです。中国美術の影響を受けたとのこと、そう言われてみれば、流麗な線や微妙な滲み具合が水墨画を思わせます。 あくまでも無欲にしなやかに描かれている動物たちですが、こちらへ投げかけてくる視線の強さに、はっとさせられます。思わず「はい、聞こえましたよ」と、 気持ちがしゃんとするのが愉快でした。
 一時預かりのはずだったうちのクロコは、15歳くらいまで生きて、うちで亡くなりました。食いしん坊だった、頑固者だった、 と没後もさんざんな評価のクロコですが、声なき声の存在を教えてくれた、たいせつな家族でした。
 

(杉原 由美子 19/4/17)

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