ひみつのビクビク

フランチェスカ・サンナ 作 なかがわ ちひろ 訳

 表紙に描かれている、ふわふわしたおばけが、「ビクビク」です。ビクビクのそばに座っている女の子は、 こうやってビクビクに守られて、幸せに大きくなりました。
 ところが、女の子たち一家が外国で暮らし始めて、事情が一変します。なにしろ、 そこでは言葉が全然通じないのです。ビクビクは張り切って、女の子をもっとしっかり守ろうと、巨大化します。 女の子は巨大ビクビクのうしろに隠れて、学校でも家でもしゃべらなくなってしまいました。
 今日もビクビクの陰で、一人でお絵描きしていると、同じように一人ぼっちだった男の子が、 自分の絵を見せにきました。二人は、かわりばんこに絵を描いて楽しみました。それも悪くないけど、 思い切って外で遊ぼうとしたら、いきなり犬が吠え立てて、男の子は咄嗟にビクビクのうしろに隠れました。 そうなんです、男の子のほうにもビクビクがいたのです。気づいてみたら、どの子も、そして大人も、 みなビクビクを連れて歩いているんです。なんだ、そうだったんだ...。
 この絵本に出合ったとき、私は、自分のことを描かれている気がしてびっくりしました。 私は、赤ん坊のときから人見知りが激しくて、物心ついてからもだれにも「こんにちは」も言えませんでした。 いつも、母か姉のうしろでビクビクしていました。自然ななりゆきで、幼稚園で早くも不登園児になりました。
 でも学校は、ビクビクしながらも不思議と休まずに行けました。ビクビクがちょっとだけワクワクに 変わったと思います。先生はおとなしすぎる私を心配して「もう少し明るく」なってほしいと母に言っていましたが、 母にしてみたら、不登園児が休まずに学校へ行ってるだけで、たいへんな進歩と思っていたことでしょう。
 人には、それぞれの一歩があるのだと思います。ビクビクしながらの一歩なら、なおのこと、 貴重な一歩なのです。それでも、ビクビクが大きくなりそうになったとき、 この絵本を思い出して深呼吸してみてくださいね。
 

(杉原 由美子 19/6/19)

ひみつのビクビク

TOPボタン