風をつかまえたウィリアム

ウィリアム・カムクワンバ/ブライアン・ミーラー 文 エリザベス・ズーノン 絵 さくまゆみこ 訳

 これは、ほんとうにあったお話です。
 ウィリアムは1987年、アフリカ南東部の小さな内陸国マラウイに生まれました。マラウイは、幸か不幸か鉱物資源に乏しく、 貧しくて電気や水道などのインフラが未発達です。
 ウィリアムが中学生になったころ、村は干ばつに見舞われて、学校どころか、その日の食べものにも困るありさまと なってしまいました。好奇心旺盛でもの作りが得意なウィリアムは、図書館へ行き、そこでエネルギーの本に出合います。英語の本でした。
 ウィリアムは、辞書をひきひき、風力発電装置の仕組みを理解していきます。電気の力で夜も灯りをともすことができる、 地下から水を汲み上げて、畑に水をまくこともできる、ウィリアムは発電の実現に向けて行動を開始します。
 発電機を作ろうと決めたウィリアムにとって、ゴミ捨て場は宝の山でした。トラクターの部品、プラスチックのパイプ、 自転車の車輪やライトに使われるダイナモ。小さなボルトやフタや針金や…。お父さんには叱られるし、村の大人たちには 馬鹿にされましたが、「手伝おうか?」と声をかけてくれる友だちがいました。いっしょに木を切ってきて高い櫓を組み、風車を引っぱり上げました。風は吹くだろうか、風車は回るだろうか、ちゃんと電気はつくだろうか…。
 風は、ウィリアムの願いを知っていたかのように強く吹いて、風車を回してくれました。電気が発生し、ウィリアムが手にしていた 電球が辺りを明るく照らしました。
 初めて読んだとき、実話であるということが信じられなくて、解説を含め何度も読み返したことでした。解説によれば、 ウィリアムはその後も勉強と実践を続け、協力者を得て、アメリカのダートマス大学でエンジニアになるための研究に励んでいるそうです。
 アフリカ育ちの画家、エリザベス・ズーノンさんは、ウィリアムが苦心して集めた素材を再現しようと、全体をコラージュで 構成しました。手づくり感いっぱいの、温かい画面になっています。
 この絵本と共に、3日付本紙「シネマの週末」でも紹介された映画「風をつかまえた少年」をごらんになれば、 ウィリアム青年の近況がよりよくわかることでしょう。 

(杉原 由美子 19/8/21)

風をつかまえたウィリアム

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